ドーベルマン

東からの眩しい日差しが差し込むBleeker street、

その光を全身に浴びた黒いMustangが西からやってくる。

それはまるで飼い主に飼いならされた獰猛なドーベルマンのように。

ただ、そのドーベルマンも幾分歳をとり過ぎていた。

獰猛だった昔の面影を残し黒い音をたてながら僕の左を通り過ぎていく。

通り過ぎる時にカメラを構えている僕と飼い主の目が合う。

濃いめのPersolをかけたSteve McQueenのような彼がこちらを見、

隣の赤いコートを着た女性も笑顔で一瞥をくれる。

次の瞬間、二人はCarmine streetを越え朝日の中に消えていた。