交感

その日、N Train から 2 Trainへの乗り換えの為、
降りてくる人をかき分けながら階段を上っていると階段の上で歌声が聞こえる。
誰かが誰かのためともなく歌う歌声
黒い買い物袋を両手で広げグレーのシャツに黒のズボンを穿き
無精髭をはやした男が帰り道を急ぎ行きかう人々の中、一人大きな声でアカペラで歌を歌っていた。
帰る時間もあり、ビニール袋を広げながら歌う彼の横を通り過ぎ
20mほど歩き階段を下りようとした時に何かが繋がる、
それは今すぐにでも切れてしまいそうなほど細い細い『糸』であった。
『こんな糸、なんになるのか? この糸が何かを変えるのか?』
分からない。
ただ、そんなことを考えていく内に足は引き返し、気づいたら彼に声を掛けていた。
『あのさ、さっき歌っていた歌なんだけど・・・?』
『ああ、これかい?Don't know much about history~♪』
『いや違う、それはSam Cookeだよね、その前の曲なんだけど?』
『ん?なんだったかな・・』考えること10秒
『ほら、こんなメロディ』『~~~♪』と鼻歌で僕がサビの部分を歌う
『あぁぁ それかい!』『これだろう?We all need somebody to lean on~~♪』
『そう、それ!』
『それって曲名なんだったっけ? メロディーだけ出てきてこの歌の名前を知らないんだよ。』
親切に彼は曲名と歌手名を教えてくれ、そこから2~3曲彼とオールディーズの話で盛り上がり
帰り際に彼が右手を差し出し握手をする
『Have a great night and God bless you...』
かなり歯が抜けた笑顔で彼が嬉しそうに言う、
そして、僕はその空っぽの買い物袋に$1札を1枚入れる
耳で感じた月曜日の夕方、Times sqareでの一瞬の交感であった。
ありがとう。
You just call on me brother
When you need a hand
We all need somebody to lean on
By Bill Withers 『Lean On Me』 in 1972
by triangleny | 2013-09-05 00:41 | Landscape | Comments(2)
今回の記事、とても興味深く拝見させて頂きました。
ありがとうございます。
この物語、今週の月曜の夕方に実際に起こったことを僕なりに注意深く再現し書いてみました。
だいたいの雰囲気は伝えれたとは思うのですが、人によって物語の捉え方が違うかもしれません。
ただ、それはそれで人それぞれの感性にお任せしたいと思います。
あったことをそのまま伝えるのは難しいですね。
物語を作っている方が楽かも。
いずれにせよこの記事を読んでいただきありがとうございます。