入り口Ⅱ

『気づくのが遅かったみたいだね』
『そうだね、目の前に立ってたのにね』
『けど、シャッター閉まってたから入れなかったんじゃないの?』
『この間も話したと思うけど、そのまますり抜けるんだよ』
『ぶつかっちゃうよ』
『信じていれば入れるんだよ』
『ぶつかったら?』
『それはこっちの世界を信じていないってことさ』
『試してみるといいよ、失敗したらその時はまだこっちの世界に来るべき時じゃないってこと』
『水に足を入れて濡れると思えばこっちに来れないし、散髪屋のシャッターにぶつかると思えば信じてないってことだから』
『そんなに焦らなくていいよ、時々君のために用意してあげるからさ』
『考えておくよ』
『そうだね 考えるのは良いことだ、頭も老化しないし、考えて考えて考えるんだよ』
『そして いざと言う時は何も考えずに自分を信じる気持ちを強く持つ』
『それって入るために必要なこと?』
『生きる全てにおいて必要なことじゃないかな・・・』
8月5日、午前3:34に点いていた散髪屋のサインを僕は見落としていた。
あれは本当にあっちの世界に行くための入り口だったのだろうか?
目が覚めると彼の言葉だけが頭をぐるぐる回っていた。
※前回の『入り口』からの続きです。
by triangleny | 2013-09-17 23:47 | Landscape | Comments(0)