カレンダーを制作する時に取り扱う3つのテーマ
1.ニューヨークの季節感を入れる
写真を撮ることを始めたのが2010年。見るもの見るものを撮り続けていく内に美しい街の風景が好きになり、この街にしかないものが数多くあることを写真を通して学びました。そんな中、たまにしか帰れない日本も時々大変恋しく感じます。写真を通して季節を感じる想いで活動しておりますと、日本人として四季折々の瞬間をこちらでも敏感に感じるようになります。元々写真を始めたきっかけはこの街の風景写真を撮り始めること、徐々にそこへ季節を感じるものをフレームに入れてゆくという”サブテーマ”を足し、より魅力的な1枚を創れないか?とフォーカスするようになっていきました。
2.その時代に起こった出来事などを入れる
ニューヨークという舞台で日々起こる偶然や奇跡、中々普段見ることができない一瞬を入れるようにしています。カレンダー作りは少々時間がかかる為、直近に起こった出来事をすぐに印刷することは出来ないのですが、ここ数年で起こったことなどを何枚か入れるようにしています。
3.「月とニューヨーク」をテーマにした写真を入れる
こちらは私が2011年から撮り続けているテーマです。スーパームーンを入れる時もありますし、私がこだわって撮影した月の作品の時もあります。カレンダーにはそれらの作品を数枚入れるようにしています。今回制作するカレンダーでは7月・10月に2作品を入れています。7月の1枚は2022年、今年のスーパームーンになります。2枚目、10月の1枚は数年に1度しか起こらない大変貴重な”Blue Moon”を1日限定でワールドトレードセンターに映し出されたHalloweenディスプレイと共に10月31日の夜に撮影した作品になります。
※以下、青い字をクリックしていただきますと、更にストーリーや他の写真などがご覧になれます。
1月:Remember "The Legendary R-32"
1月の写真は、2022年1月に最期を迎えたニューヨーク地下鉄の”R32”車両。1964年9月9日に導入され、 "Brightliners"と呼ばれ、映画「スパイダーマン」や「ジョーカー」にも出てきました。この1カットは走り去る車両の後姿で消え去ってゆく最期を表現してみました。
2月: North American blizzard 2022
2月の写真は、1月末から2月頭にかけてニューヨークを襲った “North American blizzard”の時に撮影した1枚になります。
以下、その時の写真リンクになります。青い字をクリックしてご覧ください。
3月:Magnolia in West Village
3月写真は、まだ冷たい街の気温、白く並ぶ窓からもうすぐ始まる小さな春が見え、胸を膨らませる気持ちを表現したカットです。
4月:Flatiron Spring
4月の写真は、暖かいある1日に咲いたチューリップが空に届けと言わんばかりに成長する姿をニューヨークのランドマーク” フラットアイアンビル” と共に映し込んだ1枚になります。
5月: "KO MO RE BI" Sunlight
5月の写真は木々の間から差し込む木漏れ日、レンガのアパートをバックグランドにこれから夏を迎える強く眩しい光を捕えた瞬間になります。
6月: Breezy Morning Cloisters
6月の写真は天気が良く少し湿気のある外側と建物の中のひんやりした内側の空気感の違いを表現した初夏1枚になります。
7月: Supermoon 2022 & One World Trade Center
7月の写真は、2022年今年のスーパームーンになります。
以下、その時の撮影記録状況リンクになります。青い字をクリックしてご覧ください。
8月:A Beautiful Afternoon
8月の写真は天気の良い昼下がり、ゴージャスなスポーツカーと夏の風を表現したストリートのワンシーンです。
9月:5 Pointz
9月の写真は”5Pointz” が無くなってから2023年で10年。街から一つの大きなアートが消えた瞬間です。都市開発を名目に新たにコンドミニアムを立てるという計画でグラフィティが全面に描かれたビルが取り壊されました。写真としては、ニューヨークの街から一つのアートが消えゆく儚い想いを水溜りの映り込みで表現した作品になります。
10月: Blue Moon Halloween Night
10月の1枚は数年に1度しか起こらない大変貴重な” Blue Moon” を1日限定でワールドトレードセンターに映し出されたHalloweenディスプレイと共に10月31日の夜に撮影した作品になります。
以下、その時の撮影記録状況リンクになります。青い字をクリックしてご覧ください。
11月:Autumn Color in Central Park
11月の写真はひと気がない寂しい晩秋のセントラルパークを色合いで表現してみました。
12月:Holy Night
カレンダー12月の写真は激しい風と厳しく冷たい吹雪の中、赤くライトアップされた色合いの中に煌めくクリスマスツリーが温かさを表現し、吹雪には負けない強いニューヨーカーを美しさで表した1カットになります。この時は建物の赤い色が緑に変わったりとしていたのですが、赤色を12月の1枚にセレクトしました。
―カレンダー表紙写真―
最後は今回のカレンダー表紙に使われている1枚です。この1枚には特に” ニューヨークのランドマーク” といったものは写っていません。ですが、ニューヨークという街を凝縮した表現5つを写し込みました。
まず一つ目、フォーカスされているのは古いアパートメント、この街には歴史的な建築デザインの建物が数多く、こういった建物を残し続けることで街の魅力を作り出してくれています。
次に二つ目、そのアパートの右にある改修工事の外装。先程話したの歴史的建物の改修工事がマンハッタンでは至る所で見受けられます。普段生活をしておりますと、この工事現場で歩道が汚い、また封鎖されていたり、現場の騒音など不便なことが多々あります。写真を撮る時は被写体にフォーカスさせるため映り込まないように普段は構図から外したりします。ただ、ニューヨークという街を思い出す時、この改修工事の外装が一つのキーになってくれたりもします。”世界の中心”と呼ばれる街が日常では非常に不便な街であることを表現するためにあえて構図に入れました。
3つ目、水溜りに透けて見える路上の石畳。数こそ少なくなってきていますが、一部の場所などは石畳が崩れると、アスファルトに変えずにわざわざもう一度石畳を貼り変えてまで残そうと改修工事を行なっているところもあります。下の写真のような感じです。ニューヨークにはなくてはならない景観の一つですので構図に入れました。
4つ目、水溜りに映っている「青」です。ニューヨークでは日によって真っ青に晴れ渡る何とも気持ちの良い日があります。この街に訪れたことのある方ならお分かりでしょうが、本当に見事なまでに「真っ青」な空です。その空の色が、ニューヨークという街に非常にマッチし、フォトジェニックに魅せてくれる効果があるのです。” ニューヨーク”と言えば”真っ青な空”を思い出す空もいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人ですので、”青”でこの写真を染めました。
そして最後に5つ目、水溜りの色が赤がかった紫がかった色になっていると思います。これは太陽の光に反射している油の色です。ニューヨークという街のストリートは汚い部分も多く、この油もまた普通に見ると汚い存在です。ですが、それを少し別の角度から見るとこういったアーティスティックな見方もできるということを表現してみました。別に汚い街の存在を認めている訳ではありませんのであしからず。